皆様ご無沙汰いたしております。
如何お過ごしでいらっしゃいますか。
愈々、本年も数日を残すばかりとなりました。永らく徒然日記から、離れておりましたが久しぶりに日記を綴ろうと思い立ちました。

この5月に母フミをおくりました。105歳と11か月でした。長くご贔屓を戴いているお客様や、近隣の皆様、本当にお世話になりました。母に代わりまして御礼申し上げます。

1950年の創業時より、お客様を大切に、お店の人達を大切に、そして家族を大切に、何より家業を大切にと超多忙な日々を過ごしてまいった母でした。
母より2歳年上の夫が67歳で他界し、同時に店を私達夫婦に譲りましてから、漸く自身の趣味を楽しむ時間を過ごしてまいりました。書道、写真、能楽、コーラスと多趣味でしたが、それぞれに深く没頭しておりました。

いい人生だったなと私からは思えます。

最後まで自宅の自室で過ごしておりましたので、母の部屋には思い出がいっぱい残っております。介護の真最中は時間に追われ、私の予定は未定で、母の健康状態次第という日々でしたが、決して失うだけではなかったことを今思い返しております。
母との日々の中で与えられたことが少なくないことに、今、改めて気づき始めました。

さて、本年最後のお茶の稽古納めに出席させていただく事も叶い、4年ぶりに稽古場への参道を大変緊張して歩を進めました。又、稽古を暫くお休みさせていただいておりましたが能楽の稽古人の会にも一調で「鐘之段」を謡わせていただく事も出来ました。

詞章も心情そのものでした。
生前、母へ掛ける言葉にもっと柔らかい言葉があったのにと思い出す反省の日々ですが、その痛みも少しづつ赦されていく、そんな思いの「三井寺・鐘之段」でした。写真は未だ謡い出す前に扇を脇に置いている時のようです。着物は母が好きで大切に着ていた薄紫のものです。

そして、以前毎年、母と出掛けた顔見世にもお知り合いが「助六」の御簾内の河東節に出られる日に合わせて、久しぶりに行かせて貰いました。近くで母も一緒に観ているなと感じました。
そんな歳末ですが、今年一年お引き立て頂きまして有難うございました。
来る歳も宜しくお願い申し上げます。

光悦寺(茶道の稽古場)/能楽堂/南座(顔見世)