3月、4月、5月の三ヶ月、手前共の鯖寿司を包装する際には、この季節のレッテルを使います。「た」は「醍醐は花の三宝院」。「ゑ」は「絵巻さながら賀茂祭」。「き」は「京の圓山花と雪」です。醍醐までは徒歩で行けそうにないのでパスですが、圓山の枝垂れ桜は見に行きました。地球規模で人間が右往左往しているのを知ってか知らずか、桜は美しく咲いてくれていました。
賀茂祭とも呼ばれる本年の葵祭りは、斎王代のお役を受けられる方の発表もないまま中止となってしまいました。話は変わりますが、能楽「葵上」のシテは葵上ではなく六条御息所です。葵上は登場せずに舞台正先に置かれた小袖が彼女の代わりです。怨霊に憑りつかれ床に臥せっている態がシンプルに美しく表現されているなあといつも思います。葵祭りの行列を見物に出かけた六条御息所と葵上のそれぞれが載った牛車同志のアクシデントが事の発端でした。紫式部が源氏物語を書いた頃には既に祭に大勢の見物人が押し寄せていたというのが、興味深いと思います。年代は下って、この「葵の巻」を題材にして世阿弥以前に能楽「葵上」が作られ世阿弥が改作したと言われています。能楽の主人公は元皇太子妃であったプライド高き六条御息所で、嫉妬や怒りの底に深い悲しみが感じられて好きな演目の一つです。演能もここ暫らくは休演が続いていますが、タイムスリップした能楽堂での夢の時間が待たれます。

鯖レッテル春