京都では紅梅、白梅、薄紅色の、そして枝垂れ梅も、すっかり咲き揃いました。
年号が改まって初めての如月。

50年来の友人から昨日聞いたばかりの話です。
つい先日のこと、大寄せの或る茶会で、ご準備された主菓子は蝶が二羽かかれた薯蕷饅頭だったとのこと。半東に居られた先生が正客に話されたのが、「丁度、梅の季節ですので胡蝶のお菓子をお出ししました。」と話されたそうです。

偶然、お隣りに座られた学生さんらしい、お着物を召された御嬢さんが、「どうして梅に胡蝶なのでしょうか。普通、鶯ではないですか。」と友人に尋ねられたというのです。
「良かったね。」と私。
そうなのです。友人と私は能楽『胡蝶』を拝見したばかりだったのです。
京都、一条大宮の古宮の辺りで、前シテで里女の姿の蝶の精に、ワキの旅僧が出会います。多くの花に縁のある蝶も梅花にだけは縁が無いのが、哀しく、気品高い梅花に憧れているのです。蝶は、中入を経て、天冠を戴いた後シテになり、旅僧の読誦する法華経の功徳に拠って梅花に縁を結び得て、やがて春の夜もほのぼのと明けていくと、胡蝶は歌舞の菩薩の舞姿を残して霞に紛れ消え失せる、というあらすじです。
中ノ舞が終り、「四季折々の花盛り、梢に心をかけまくも、畏き宮の所から、しめの内野も程近く、野花黄蝶春風を領し、花前に蝶舞ふ紛々たる、雪を廻らす舞の袖、返すがえすも面白や、」で端の舞に続きます。
「・・・明け行く雲に翅うち交わして、霞に紛れて、失せにけり」で終曲です。美しいお能でした。お蔭で友人は、梅に胡蝶のお菓子のわけを、お話することが出来たそうです。聞いた私もホッとすることでした。
この季節、二月いっぱいで昨年の十二月から三ヶ月走ってきた蒸し寿司が終ります。次のシーズン迄、しばしお休みです。
「茶のあるくらし・なごみ」に東京在住の平松洋子さんと京都在住の姜尚美さんの「東西おいしい往復書簡」に掲載していただきました。

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