文楽の夜の部のチケットが2枚手に入って、丁度公休日に当たっている社長と珍しく出掛けることとなりました。社長は二度目、私にとっても前回から時間は随分経っていて、久しぶりに京阪の北浜から日本橋にと向かいました。高校の同年の同窓生の三輪太夫さんも丁度「心中宵庚申」に出ておられて、生きてそこにいるとしか思えない人形と浄瑠璃と太棹の世界に堪能いたしました。30分の幕間に1階の食堂で天丼をいただきながら「半兵衛さんとお千代さんは不憫やねえ」と私。「お母はん、不憫やというなら、僕ほど不憫な者はないよ。店に一日居ててみて。仕込場では〇〇君は穴子のヒレを取っている時にスカタンしとおるし、洗い場では△△ちゃんは手を滑らせたと言うて、うつわを割っとおるし、・・・・」冗談とも本当ともわからない社長の話に、本当に笑わせて貰いました。まあ、うちの店はこんなもんです。
2幕目は「紅葉狩」。清十郎さんが遣っておられた更科姫が、鬼女になった時にご自身も渋い雷雲の様な柄の着物に着換えられて、それが何とも素敵な色目でした。


前回、琵琶湖の桜を楽しんだ高校のクラス会で福井県は小浜のお寺に嫁がれたM子さんが「新蕎麦が出来る秋に是非うちに来て下さい。住職は蕎麦を打って、お人に振る舞うのが好きなので。」とお誘いがあり、手打ち蕎麦と聞いて食いしん坊の我々は即決。それが大きな間違いでした。クラス会なので全員に往復ハガキでお誘いと出欠の返信をいただき、1日目の昼食の手打ち蕎麦のみお世話になると思い込んでいた私達同級生の内出席者13名。東京、新潟からJRで、関西からは2台の車に分乗して目的地のお寺に集合したのです。


あとは切ってゆがくだけと準備して下さっていた新蕎麦だけでなく、胡麻の香りいっぱいの白和え、柿なます、胡麻豆腐、茸ご飯、柿のシャーベット、・・・と全てM子さんのお手製の精進料理のおいしさにびっくり。夜は手配していただいていた宿でふぐ三昧。
全く想定外の事として、二日目もご住職自らハンドルを握って計3台で素晴らしい秋の若狭路と日本の紅葉百選の萬徳寺、国宝の本堂と三重塔を持つ明通寺を案内していただきました。ご住職と坊守の同級生のM子さんには、貴重な時間を割いて歓待していただき恐縮至極でしたが、私達にとって福井の小浜が日本の中で一番暖かな場所になった瞬間でした。
そして帰って来た翌々日、烏丸一条に用事があって出掛けた折に立寄った京都御所の秋も深まって来ていました。

 

広告